着物のきほん。

着物のいろは

着物にまつわるあれやこれやをもっと知ってみたいと思いませんか? 生地や柄、小物や着付けなど着物のことを1から分かりやすく解説します。 着物を知ると着こなすのがもっと楽しくなる『着物いろは』です。

第四回<フォーマル着物>/留袖・振袖について

着物の「格」。フォルムが全て同じ着物は、格を見分けるのが難しい。そう思っている方も多いのではないでしょうか?コラム4からは、そんな着物の格について、種類や見分け方などをご紹介していきます。

まずは、「格」が高い順から。
着物で最も格が高い着物は「留袖」と「振袖」です。

さて、この二種類の着物。どちらも「第一礼装」と言われる着物ですが、何が違うのでしょうか?

その1、着る人の立場。
「留袖」は、既婚女性。「振袖」は、未婚女性が着用する、最も格の高い着物です。

その2、名前の由来。
「振袖」は、言わずもがな、長い袖が特徴です。振袖は、もとは舞踊の際に着られていた着物で、長い袖を左右に振ると「好き」、前後に振ると「嫌い」という意味がありました。袖を振る仕草は、「厄払い」「清めの儀式」にも通じるため、結婚式や成人式などに着ることで、人生の門出に身を清めるという意味を持ちます。そんな振袖を、江戸時代、若い女性は着ていたのですが、結婚したり、18歳を過ぎたりすると、袖を短くして縫い留めたのです。これが「留袖」の名前の由来です。

留袖について

留袖は、前述の通り既婚者が着用する着物ですが、主な着用シーンは、結婚式です。新郎新婦の母親や仲人、親族の既婚女性が着用します。

<特徴>

1、色は「黒」、模様は「裾」のみであること

着用した時に、帯より下の下半身にのみ模様が入っているのが、留袖の大きな特徴です。

2、「五つ紋」であること

背中に一つ、胸と袖の後ろ側にそれぞれ一つずつの、計5箇所に紋が入っています。

3、「比翼仕立て」であること

本来、留袖は白地の着物と留袖を二枚重ねて着ていました。しかし現在では、より着やすいように簡略化され、表から見て二枚着て見えるよう、衿や袖口、裾に、白地の生地を重ねて仕立てています。これを「比翼(ひよく)仕立て」と言います。

・留袖に合わせる帯や小物について

留袖には、「白やゴールドベースのもの」と覚えておくと良いと思います。
長襦袢、半襟、足袋、帯揚げ、帯締めは、「白」をセレクトしておけば間違いありません。
帯の種類は、「袋帯」と呼ばれる長い帯を結びます。袋帯の中でも、「金地」「銀地」「白地」などの色合いが良いでしょう。バッグや草履も、帯と同じ色合いをセレクトすればOK。
そして最後に、忘れてはいけない大切なアイテム「末広」です。色も注意が必要です。木の部分が黒塗り(黒骨)で、扇面がそれぞれ金と銀のものを。この末広は、広げたり扇ぐためのものではなく、帯の左側に差し込んでおきます。この時、正面から必ず「金」が見えるように。

黒以外の「留袖」もある!?

留袖には、「黒」以外の色もあります。ただし、第一礼装とされる留袖は、「黒」のみです。黒以外の留袖は、やや格が下がります。そして、黒留袖との大きな違いは、既婚者でも未婚者でも着用することができる点です。
また、「裾のみに模様がある」のは黒留袖の特徴と同じですが、色留袖は「五つ紋」ではなかったり、「比翼仕立て」でないものもあります。
帯や小物の組み合わせは、黒留袖と同じにしておくと間違いありません。

振袖について

振袖は、袖が長いというフォルムの特徴以外は、留袖ほど色やパーツなどに決まった特徴はありません。

・振袖に合わせる帯や小物について

後ろ姿も華やかになる帯結びができるように、帯は長さのある「袋帯」を。
そのほかは、色や柄も自由にファッション感覚でセレクトして楽しめる着物と言えるでしょう。

大竹恵理子 おおたけえりこ/着物スタイリスト・着付師
父が大工、母が和裁士という家庭に生まれ育ったため、自然と日本文化に興味を持つ。長沼静きもの学院にて、一般的な着付けをはじめ、花魁などの時代衣裳、白無垢などの婚礼衣裳まで様々な着付けを学んだ後、(株)着物屋くるり入社。以降7年間、くるりのスタイリング・着付け全般を担当。独立後、フリーランスの着物スタイリスト・着付師として、広告、CM、雑誌などの媒体を中心に活動中。

衣裳協力 : 山音株式会社/着物屋くるり
illustration : Kyoko Aoyama
photo : Saburo Yoneyama (SignaL)
design : Izumi Itoyama (Japan Designers Organization)