着物に魅せられ、着物を愛するー
美しきKIMONO LOVERたちが、自前の着物で想いを語ります。
第一回目にご登場いただくのはモデルの田沢美亜さん。
涼しげに藍を着こなす姿に、魅了されました。

田沢美亜さん(モデル)

モデルであることを活かして、着物の魅力をもっと広めたい

涼しげな藍染めで現れた、第一回のゲスト・田沢美亜さん。着物に対してはっきり興味を持ったのは、アメリカの美大に通ってファッションの勉強をしていたときなのだそうです。
「向こうでは、〈キモノ〉と言えばとっても興味を持たれるんです。私も子供の頃から祖母が毎年浴衣を仕立ててくれていたのもあって、和服に触れてきてはいましたが、正直あまりその魅力を意識したことがなかった。でもアメリカで「柄も素材も形も、素晴らしい!」と、改めて周りから教えてもらった感じですね。そこから私のアイデンティティーの半分である〈日本人〉の部分が目覚めたみたいで(笑)もっと着物について知りたい!と思うようになって。まずは課題の時に、自分で浴衣を縫ってみたんです」

帯とバッグは、着物の魅力を教えてくれたお祖母様のもの。帯揚げは銀座もとじで購入。「小物の合わせは本当にまだまだ。イメージを伝えて、こういうのが欲しいって相談しています」。知らないことは素直にプロに聞くという姿勢も、大切。

以来、着物を始めとする〈和〉に強く惹かれるようになった美亜さん、帰国して本格的にモデルをスタートすると、ますます縁が深まります。
「ある撮影で着物をお見立てしていただく機会があって着物一式仕立てしたんです。でも、着る機会がなかなかなくて…そしたらヘアメイクさんが「お茶を始めたら着る機会があるわよ」と茶会に誘ってくださって。それがとても楽しくて、お茶の世界にハマってしまったんです……。そのうち、2回に1回くらい着物を着て参加するようになって、着物を着ることがだんだん自分の暮らしの中に入ってきたんです」

「もともとバリのバティック(ジャワ更紗)だったり、インドのブロックプリントだったり……、テキスタイルが大好きなんです。着物もやっぱり柄が好きで、組み合わせの妙を楽しめるところですかね…とは言っても、本当にすごく難しいですけど(笑)」
美亜さんがコーディネートの参考にしているものの一つが、浮世絵。
「浮世絵が大好き!色使いや柄合わせはもちろん、あの中に表現されている所作だったり佇まいだったり…… すべてが参考になります」
もっと日常的に着物を着よう、と決めてからは色々な着物屋さんを訪ねるように。
「ある時、ふらりとギャラリー感覚で銀座もとじさんに入ってみたんです。もちろん買えないから、見せていただくだけ……、と思ってお邪魔したんですが、店員さんがたくさん見せてくださって、色々とお話ししてくださって。それがご縁でもとじさんにはよく伺うようになり、作家さん、職人さんとお目にかかる機会をいただけるようになりました」
その手仕事を目の当たりすることで、手間をかけて丁寧にものづくりをする世界にますます強く惹かれるようになったという美亜さん。
「職人さんと触れる機会が、もっとあったらいいなと思うんです。どういうプロセスを踏んでいるのか理解できるし、どこにこだわりがあるかもわかる。お値段もね、納得できると思う」

「小物は祖母のものを借りることが多いです」。藍染の着物に合わせて、帯も帯締めもブルーをチョイス。藍色、水色、群青色など、多様なブルーがひとつにまとまっているのが美しい。

「着物はファッションだから一人ひとりの楽しみ方があるし、それこそ好きなスタイルは人それぞれ。どう着てもいいと思うんですが、ひとつ「こういう姿が好き」という女性像を持っていた方がいい気がします。具体的なイメージを持っていた方が、着物に“着負け”することがないと思うんです。
私の好きなスタイルは、スーッと凛と、きれいに着る。もうね、完璧に着たいんです(笑)」
美亜さんのその思いは、着物の素晴らしさをもっとアピールしたいというところから生まれたもの。

「当たり前だけど、着物って着ちゃうと自分で自分の姿が見られないでしょ。帯も小物も、柄も見えない。こだわったのに楽しみが半減しちゃうって思ってた時期もあったんです。でもある時「着物は見る人を愉しませるために着るもの」という考え方を教えていただいて、「あ、そうか」って腑に落ちたんです。私の着姿を見て「着物っていいな」って思っていただけたり、職人さん、作家さんの仕事に興味を持っていただくきっかけになったら嬉しいなって…… おこがましいんですけど(笑)」
“自分のため”という枠を超えることで、以前よりさらに楽しみが増えたという美亜さん。
「私の世界を広げてくれた着物には、感謝しかない。知りたいことはどんどん増えていくし、楽しみながら一生勉強していきたいです」

今日のお着物(撮影日:7月5日)
長板中形の型染め作家、松原伸生先生の作品です。魅力はたくさんあるけど、特に藍のコントラストが好きです。本藍染の美しさに心を掴まれて、工房へもいつか訪れたいと思っています。
着こなしのテーマは「青ベースのワントーンコーデ」。襦袢と足袋は白麻で、草履はパナマで涼しさを演出しました。夏着物は「いかに涼しげに見せるか」ですから(笑)。

左/美亜さんの瞳と同じ色、羽根柄の水牛かんざし。「季節を問わず使えるので重宝しています。こう、手でかんざしを直す仕草が色っぽい!ってカメラマンさんに言われて(笑)。そんなつもりはなくても所作で女性らしさ、艶っぽさが表現出来るというのもいいですよね」 右/清潔感あふれる本麻の白足袋は向島の足袋専門店「めうがや」さんでオーダーメイド。「これは本当にお願いして良かった!足先がとても気持ち良いです」。採寸から仕上がりまで、実に半年。履いて洗って調整、を繰り返して出来上がります。


田沢美亜(たざわ・みあ)
モデル。1979年10月、東京生まれ。日本人の父とオーストラリア人の母を持つ。アメリカの美大にてアパレルを専攻。卒業後は日本に帰国し、約4年デザイナーアシスタントとして就業するも、26歳の時にモデルに専念することを決意し、現在に至る。また最近では、和の心を広めるユニット「uraku」を結成。全国各地へ赴いて〈日本の良いもの〉を紹介している。
uraku http://www.urakutokyo.com/

staff
interviewer:KEI YOSHIDA
photographer:SABURO YONEYAMA (SignaL)
hair&make-up:MIHOKO FUJIWARA (LUCK HAIR)
kimono dresser:ERIKO OTAKE
art director:IZUMI ITOYAMA (Japan Designers Organization)
special thanks:104GALERIE