着物のきほん。

着物のいろは

着物にまつわるあれやこれやをもっと知ってみたいと思いませんか? 生地や柄、小物や着付けなど着物のことを1から分かりやすく解説します。 着物を知ると着こなすのがもっと楽しくなる『着物いろは』です。

第二回 絹糸の種類について

着物一反を作るのに、何頭の蚕が必要か知っていますか?

着物の主な素材である絹糸は、蚕が作る繭からできています。しかし繭から絹糸を作るためには、蚕の成長を途中で止めてしまわなければいけません。

着物一反に必要な蚕の数は、2700頭。たくさんの蚕の命をいただいて、着物や帯はできているのです。

繭から絹糸にする方法は、主に2パターン。それぞれの方法からできた絹糸は「生糸(きいと)」と「紬糸(つむぎいと)」と呼ばれ、特徴が大きく異なります。

「生糸」の特徴は、細くて光沢があること。節のない滑らかな糸です。

「紬糸」は、やや太めで節があるのが特徴です。生糸のような光沢はありません。

この特徴を理解しておくと、先に説明した「染め」と「織り」をより深く理解できるようになります。

「生糸」と「紬糸」はこうしてできあがります

繭から絹糸を作るため、繭の状態を確認し、「上質なもの」と「そうでないもの」に選別します。
上質な繭。繭に汚れや穴あきなどがない綺麗なものを「上質な繭」として選別します。上質な繭は、「生糸」になります。
くず繭。繭の中で蛹になっている蚕が羽化して、繭に穴があいてしまったもの。汚れがある繭を「くず繭」として選別します。くず繭は、「紬糸」になります。

●「生糸」を作る工程

上質な繭のみを煮て柔らかくし、繭糸をほぐれやすくします。
煮た繭から糸口を探し、1個の繭から1本の糸を引き出していきます。
繭から引き出した1本の糸はとても細いため、7個の繭から引き出した糸を合わせて、しっかりとした1本の糸にします。

●「紬糸」を作る工程

くず繭を煮て柔らかくし、繭糸をほぐれやすくします。
柔らかくなった繭をほぐしながら、引き伸ばしていきます。
引き伸ばした繭を数枚重ね、綿状の「真綿(まわた)」にします。
手で撚りをかけながら、真綿から紡いで糸にしていきます。

大竹恵理子 おおたけえりこ/着物スタイリスト・着付師
父が大工、母が和裁士という家庭に生まれ育ったため、自然と日本文化に興味を持つ。長沼静きもの学院にて、一般的な着付けをはじめ、花魁などの時代衣裳、白無垢などの婚礼衣裳まで様々な着付けを学んだ後、(株)着物屋くるり入社。以降7年間、くるりのスタイリング・着付け全般を担当。独立後、フリーランスの着物スタイリスト・着付師として、広告、CM、雑誌などの媒体を中心に活動中。